利益を増やしたいが、何から手をつけるべきか分からない

こういうご相談を、よくいただきます。

利益を増やしたい。ただ、何から手をつければいいのかが分からない。

広告を出したほうがいい、SNSもやったほうがいい、と周りから言われる。ホームページも古いままで気になっている。営業のやり方も変えたほうがいいのかもしれない。人手も足りていない。どれも必要な気はするけれど、全部に手を出せるほど、お金も時間もない。

そして、どれが一番効くのかを教えてくれる人がいない。相談すると、その会社が売っているものを勧められる。制作会社に聞けばサイトを作りましょうと言われ、広告代理店に聞けば広告を出しましょうと言われる。どれももっともらしく聞こえるけれど、自社にとって本当にそこが最優先なのかは、判断がつかない。

これは、相談を受ける側から見ても、無理のない話だと思っています。制作会社は制作で利益を出しているので、制作を勧めるのが自然です。広告代理店も同じです。手段を一つしか持たない会社は、その手段を勧めるほかありません。悪意があるわけではなく、構造がそうなっているのだと思います。

その点、私たちは複数の手段を持っているぶん、どれを勧めるかをフラットに考えられます。売りたいものを売るのではなく、必要なものを提案する。それができるのは、特定の手段に依存していないからです。

そのうえで、判断の材料そのものを開示しておくほうが、結果的に役に立つのではないかと考えました。この記事に書いてあることを読めば、私たちに頼まなくても、ある程度は自分で判断がつくと思います。

このページには、いま自社がどこで詰まっていて、どこから手をつけるべきか。それを私たちが普段どういう順番で考えているかを書きました。

正解が一つに決まる話ではありません。業種によっても、規模によっても、判断は変わります。ただ、こういう順番で見ていけば、少なくとも打ち手の候補は絞り込める、という考え方はあります。私たちが実際に使っているものです。

長い記事になりますが、自社に当てはめながら読んでいただければ、いま何をすべきかの見当は、かなりつくのではないかと思います。

第1章 利益は、4つの数字で決まっている

当たり前の式ですが、共通の物差しとして一度だけ置いておきます。

利益 = 客数 × 単価 × 頻度 − コスト

何人のお客様が、いくらのものを、何回買ってくれたか。そこから、提供にかかったコストを引いたものが利益です。

この式を最初に置くのは、打ち手がすべて、このどれかの項目を動かすためにあるからです。広告を出すのは客数を増やすため。抱き合わせ販売をするのは単価を上げるため。メルマガを配信するのは頻度を上げるため。業務を効率化するのはコストを下げるため。

このうち、単価とコストは、自社の中で決められます。いくらで売るか、どこから仕入れるか、どう作るか。難しい判断ではありますが、決めるのは自分たちです。

客数と頻度は、そうはいきません。お客様が動いた結果として決まります。そして、この2つはもう一段細かく分かれます。

客数と頻度は、さらに2つずつに分かれる

客数は、接点を持った人の数と、成約率の掛け算です。

客数 = 接点を持った人の数 × 成約率

サイトに来た人、問い合わせをくれた人、名刺交換をした人。何らかの形で接点を持った人が何人いて、そのうち何割が実際に買ってくれたか。この掛け算で客数が決まります。

なお、成約率そのものは、利益の式には出てきません。率であって、金額でも人数でもないからです。あくまで、客数を動かすための要素として見ます。

頻度のほうは、2つの方法に分かれます。

一つは、同じ商材をもう一度買っていただくこと。いわゆるリピートです。もう一つは、別の商材を買っていただくこと。関連する商品を追加で提案したり、上位のプランに移っていただいたりする形です。

後者ができるかどうかは、商品構成の問題になります。売るものが一つしかなければ、一度買った人には、もう提案できるものがありません。どれだけ関係が良好でも、次に売るものがなければ、そこで終わりです。

これは、リピートが起きにくい商材ほど効いてきます。一生に一度しか買わないような商材であれば、同じものを売り直すことはできません。その場合、次に必要になるものを用意できているかどうかで、一人のお客様から生まれる売上が変わります。

動かせる数字は、5つ

まとめると、利益を動かせる数字は5つです。

1. 集客数(接点を持った人の数)
2. 成約率
3. 頻度(もう一度買っていただく回数)
4. 単価
5. コスト

利益を増やす方法は、この5つのどれかを動かすこと以外にありません。逆に言えば、この5つのうち、いまどこが一番弱いのかが分かれば、何をすべきかは絞り込めます。

ここで、自社の数字がどうなっているかを確認します。

月に何人と接点を持っていますか。そのうち何割が成約していますか。一度買った人は、平均して何回買ってくれますか。平均単価はいくらですか。一件あたり、提供にどれくらいのコストがかかっていますか。

すぐに答えられない項目があれば、そこが弱点の候補です。

これは経験則ですが、数字が分からない場所は、たいてい放置されています。測っていないものは改善のしようがないので、当然といえば当然です。そして、放置されている場所には、伸びしろが残っていることが多いです。

このうち、集客数、成約率、頻度の3つは、お客様が動いてくれた結果として決まる数字です。次の章では、お客様がどこで止まっているのかを見ていきます。残る単価とコストは、第3章で扱います。

第2章 お客様の流れの、どこで止まっているか

集客数、成約率、頻度。この3つは、施策によって改善が可能です。ただ、どの施策が効くかは、お客様がどこのフェーズで止まっているかによって変わります。

同じ「集客を増やす」でも、そもそも知られていないのか、知られてはいるが興味を持たれていないのかで、やるべきことは違います。だから、まずお客様の側で何が起きているかを見ます。

一般的には、認知から購入までをいくつかのフェーズに分けて考えることが多いと思います。知ってもらい、興味を持ってもらい、比べられて、選ばれる。買っていただいた時点で、一区切りという捉え方です。

ただ、私たちはそこで終わりにせず、購入の先まで含めて7つのフェーズで見ています。

認知 → 興味関心 → 欲求 → 比較検討 → 購入 → 継続 → 発信 →(認知に戻る)

購入の後ろに、継続と発信を足しています。そしてこの7つは一直線ではありません。購入してくれたお客様が最後の発信を行うことで、次の人にとっての認知になります。ぐるりと一周して戻ってくる、これを円環のかたちで捉えています。

なぜこう見るのかは、このあと説明します。

もう一つ、この並べ方で意識しているのは、事業者側ではなく、お客様側の目線に立っていることです。広告を出した、記事を書いた、商談をした。自分たちが何をやったかは分かっても、それでお客様が動いたかどうかは分かりません。施策はやっているのに成果が出ない、という状態の原因は、こちら側の目線だけでは見えないままになります。

歪みのない円を、一緒に作る

私たちは「長期的に無理なく回り続ける事業を、一緒に作るマーケティング支援」を掲げています。この回り続ける、というのがまさにこの円環のことです。

円のどこか一箇所で人が減ると、そこから先には届きません。知ってもらう人は多いのに購入まで進む人が少なければ、集めた人の大半が途中で離れます。購入までは順調なのに、継続と発信が起きていなければ、一周して戻ってくる人がいないので、毎回ゼロから集め直すことになります。

つまり、どこか一箇所だけを増やしても、円はきれいに回りません。むしろ、一箇所だけ増やすと、その前後との差が大きくなって、取りこぼしが目立つようになります。広告を増やしたのに利益が増えない、という状態は、これが起きているときによく見られます。

私たちがやろうとしているのは、この円のいちばん人が減っているところを見つけて、そこを改善することです。全体を均等に伸ばすのではなく、差の大きいところから埋めて、無理なく回る形にしていく。一箇所だけを大きくするより、そのほうが結果的に速いと考えています。

上から見ると円、横から見ると螺旋

もう少し正確に言うと、この円環は平面ではありません。

真上から見ると、認知から発信まで、ぐるりと一周する円に見えます。ただ、真横から見ると、一周するごとに少しずつ上に上がっていく螺旋になっています。

一周目より二周目のほうが、輪が大きい。二周目より三周目のほうが、さらに大きい。同じところをぐるぐる回っているのではなく、回りながら上に広がっていく形です。

なぜそうなるかというと、一周するたびに、次の周の出発点が高くなるからです。

満足したお客様が誰かに伝えると、その人が新しい認知として入ってきます。しかも、紹介で来た人は、最初から一定の信頼を持った状態から始まります。ゼロからの認知ではありません。加えて、既存のお客様は継続して買ってくださるので、次の周では、前の周の売上に上乗せされていきます。

逆に、円が回っていない会社は、螺旋になりません。毎年、同じ高さで同じ大きさの円を、ゼロから描き直すことになります。去年と同じ売上を作るために、今年も同じだけ広告費を払う。それでも現状維持がやっとで、少し気を抜くと縮んでいきます。

私たちが円環という捉え方をしているのは、この違いが大きいからです。目先の一周を大きくすることより、次の周が今年より高い位置から始まる状態を作ること。それが、無理なく回り続ける、ということだと考えています。

円として捉えると、見えてくること

直線で見ていると認知が足りなければ認知を増やす、という発想になります。でも円として見ると、後ろのフェーズが前のフェーズに効いていると分かります。

一つ補足すると、継続も発信もお客様がすることです。もう一度買うかどうかを決めるのはお客様ですし、口コミを書くのも、SNSに投稿するのも、知り合いに紹介するのも、お客様です。私たちにできるのは、そうしたくなる状態を作ることだけ。

そのうえで、継続と発信が起きていない会社を考えてみます。一度きりで終わってしまうので、リピートの売上がありません。それだけでなく、誰も他の人に伝えないので、紹介や口コミからの流入もありません。

すると、新しいお客様は、自力で集め続けるしかなくなります。広告なら毎月の出費が続き、検索やコンテンツから来ていただく場合も、作る手間と時間がかかります。一度書いた記事が長く効いてくれるとしても、それを積み上げるところまでは、こちらの労力です。

認知を取るのが大変なのは、広告の出し方や記事の作り方に問題があるからとは限りません。買ってくださった方が継続しないので、毎月ゼロから集め直すことになるからです。

この状態で広告費や記事を増やしても、成果が出ないわけではありません。ただ、増やした分だけ翌月にはいなくなるので、効率は上がりません。買ったあとの繋がりを作っておけば、同じ費用でもっと売上が残ったはずです。

逆に、継続と発信が起き始めると、認知にかける負担が下がります。買ってくださった方が、また買ってくれる。その方が誰かに話したり、口コミを書いたりして、新しいお客様が入ってくる。この分については、こちらが手を動かさなくても入ってきます。しかも、信頼している人から聞いて来た方は、比較検討のフェーズをほぼ飛ばして来ることがあります。

認知が足りないときに、認知だけを見ていても解決しないことがある。円として捉えるのは、そのためです。

見るべきなのは、詰まっているフェーズだけ

ここから、7つのフェーズそれぞれについて、どんな詰まりが起きるのか、どう見分けるのかを見ていきます。

ただ、全部を同時に改善する必要はありません。というより、それは不可能です。

流れの中で、どこか一箇所が詰まっていれば、その先のフェーズには人が届きません。知られていない会社が比較検討の資料を整えても、その資料自体は必要なものですが、比べる相手として挙がっていない以上、まだ出番がありません。逆に、知られてはいるのに購入で落ちている会社が、さらに広告を打っても、取りこぼしが増える分だけ効率が下がります。

だから、いま自社がどこで止まっているかを特定することが先です。当てはまるものがあれば、そこが弱点です。

1. 認知 そもそも、知られていない

存在を知られていないフェーズです。良い商品でも、知られていなければ、検討すらされません。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • サイトのアクセスがそもそも少ない
  • 新規の問い合わせが、紹介と口コミだけ
  • 自社名で検索する人がほとんどいない
  • その地域、その業種で探されたときに、自社が出てこない
  • 売上が、社長本人の稼働時間に比例している

このうち、当てはまるものがあれば、認知の段階が詰まっている可能性があります。

なお、最後に挙げた「売上が社長本人の稼働時間に比例している」について補足します。認知が詰まっている会社に、もっともよく見られる状態だからです。

多いのは、社長の時間が上限になっている状態

認知が詰まっている会社を見ていて、共通して感じることがあります。それは、社長が一人でオフラインの営業を頑張っている、という状態です。

対面の営業は、成約率が高い。相手の反応を見ながら話せるし、その場で疑問にも答えられる。信頼も築きやすい。だから、うまくいっている会社ほど、対面に頼りたくなります。

ただ、対面営業には決定的な制約があります。社長の時間以上には増やせない、ということです。

一日に会える人数には限りがあります。移動時間もかかります。売上を2倍にしたければ、稼働も2倍にする必要がある。でも、一日は24時間しかありません。どこかで必ず頭打ちになります。

かけた時間の分しか成果が増えない状態、と言い換えてもいいと思います。

対して、Webの施策は、かけた時間と成果が比例しません。一度書いた記事は、寝ている間も読まれ続けます。一度作ったサイトは、同時に何人が見ても構いません。ここが根本的に違います。

認知が詰まっている会社の多くは、この一度作れば効き続ける場所に、ほとんど手を打っていません。

やってはいるが、行き当たりばったり

まったく何もしていない、という会社ばかりではありません。SNSを多少更新している。ホームページのブログ記事を、思い出したときに書いている。そういう会社もあります。

ただ、その多くは、成果から逆算されていません。

何のためにその投稿をしているのか。誰に届けたいのか。届いた人に、次に何をしてほしいのか。そこが決まっていないまま、とりあえず更新している。だから、続けても数字が動きません。そして、動かないので、だんだん更新が止まります。

これは、努力が足りないのではなく、努力の向きが定まっていない状態です。むしろ、忙しい中で時間を割いて更新している分、報われなさは大きいのではないかと思います。

成果から逆算する、というのは、たとえばこういうことです。自社の商品を必要としている人は、どんな言葉で検索するのか。その言葉で検索したときに、いま何が出てくるのか。そこに自社が出るためには、何が足りないのか。その順で考えると、書くべき記事は自然に決まります。

思いついたことを書くのと、必要とされている情報を書くのとでは、同じ更新でも結果がまったく違います。

このフェーズの見極め方

認知が詰まっているかどうかは、比較的判断しやすい部分です。

まず見るのは、サイトのアクセス数です。月に数十人しか来ていないなら、そもそも母数が足りません。この状態で、サイトの中身をどれだけ直しても、問い合わせは増えません。読む人がいないからです。

もう一つは、新規の問い合わせがどこから来ているか。紹介と、既存のお客様からの追加依頼だけ、という状態なら、自力で新規を取る経路がないということになります。今はそれで回っていても、紹介が減ったときに打つ手がありません。

ここが詰まっている場合、まず、来てもらうことが先になります。

詳しくは「サイトを作ったのに、問い合わせが来ない」

2. 興味関心 知られてはいるが、関心を持たれていない

知られてはいる。でも、読まれない、覚えられない、素通りされる。そういうフェーズです。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • アクセスはあるが、1ページだけ見て帰る人が多い
  • 滞在時間が極端に短い
  • SNSのフォロワーは増えているが、反応がない
  • 展示会で名刺は集まるが、その後の連絡が続かない
  • サイトを見た人から、何をやっている会社なのか聞かれる

このうち、当てはまるものがあれば、興味関心の段階が詰まっている可能性があります。

来ている人が、そもそもずれている場合

ここでまず疑ってほしいのが、来ている人が、あなたのお客様ではない可能性です。

たとえば、渋谷区で犬のしつけをしているサービスなのに、ブログ経由で、しつけとはまったく関係のないキーワードからアクセスが集まっている、ということがあります。犬の雑学のような記事が読まれていて、数字上はアクセスが増えている。でも来ているのは、しつけを頼む気がまったくない人たちです。

この状態でサイトの中身を直しても、問い合わせはあまり増えません。関心を持たれていないのではなく、最初から関心の対象が違うからです。

見分け方は、流入しているキーワードを確認することです。サーチコンソールで、どんな言葉で検索して来ているかが分かります。そこに、自社のサービスを探している人が使いそうな言葉が並んでいなければ、集めている人がずれています。

このケースは、実は認知の問題です。数は集まっているので認知が取れているように見えますが、届けたい相手には届いていません。

届いてはいるが、刺さっていない場合

正しい人が来ているのに、素通りされている場合は、また別です。

このフェーズで足りていないのは、多くの場合、自社の強みや売りが言語化されていないことです。

何をやっている会社なのかは書いてある。サービスの一覧もある。でも、他とどう違うのか、なぜこの会社なのかが書かれていない。読んだ人が、まあ普通の会社だな、と思って離れていきます。

厄介なのは、これが会社側からは見えにくいことです。自分たちにとっては当たり前になっている強みほど、書かれていません。長年やってきたこと、社内では常識になっていること。それが実は、外から見ると珍しかったり、決め手になったりします。

私たちが新しくご一緒するとき、いきなり施策の話をせず、まずヒアリングに時間をかけるのは、このためです。話を聞いていくと、本人が価値だと思っていなかったところに、決定的な違いが埋まっていることがよくあります。

3. 欲求 関心はあるが、欲しいところまで届いていない

面白そう、とは思われている。でも、自分にも必要だ、とまでは思われていないフェーズです。

ここは、見落とされやすい場所です。興味と欲求は近いようで、まったく別の心理だからです。

興味は、へえ、と思う状態です。欲求は、うちにも要る、と思う状態です。この間には、想像以上に距離があります。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • 資料請求や無料相談までは来るが、そこで止まる
  • 良いサービスですね、と言われるが、話が進まない
  • 検討します、と言われたまま、連絡が途絶える
  • 「いつかお願いしたい」と言われ続けている

このうち、当てはまるものがあれば、欲求の段階が詰まっている可能性があります。

足りないのは、情報量ではなく自分ごと感

このフェーズの詰まりは、情報が足りないというより、自分ごとになっていないことが原因です。

サービスの説明は十分にある。機能も、進め方も、料金も書いてある。それでも動かないのは、それを導入した後の自分の姿が、具体的に想像できていないからです。

ここで効くのが、実績のコンテンツです。ただし、ただ実績を並べるだけでは足りません。

必要なのは、自社と近い会社の例です。同じくらいの規模、同じような業種、似た悩みを抱えていた会社が、どうなったのか。それが分かると、読んだ人は自分に置き換えて考えられます。

逆に、有名企業の実績ばかりが並んでいると、規模が違いすぎて参考になりません。うちには関係ない話だな、と思われて終わります。

もう一つ大事なのが、ベネフィットの言語化です。

何をしてくれるか、ではなく、その結果どうなるか。サイトを作ります、ではなく、問い合わせがこう変わります。この違いは大きい。前者は作業の説明で、後者は変化の約束です。読んだ人が欲しいのは、後者のほうです。

4. 比較検討 欲しいとは思われたが、他社と比べられて負けている

欲しい、とは思われている。ただし、あなたの会社から買うとは決まっていないフェーズです。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • 相見積もりになると、決まらないことが多い
  • 価格で負けることが続いている
  • 競合と何が違うのかを聞かれて、うまく答えられない
  • 検討期間が長く、途中で立ち消えになる

このうち、当てはまるものがあれば、比較検討の段階が詰まっている可能性があります。

足りないのは、信頼残高

このフェーズで足りていないのは、多くの場合、信頼残高です。

前のフェーズで必要だったのは、うちにも要る、と思わせる材料でした。ベネフィットの言語化や、近い規模の実績。このフェーズで必要なのは、この会社に任せて大丈夫だ、と思わせる材料です。

具体的には、お客様の声、第三者からの評価、継続している取引の存在、担当者の顔と経歴。要するに、この会社は信用できるのか、という問いに答えるものです。

ここが薄いと、比較されたときに残る判断材料が、価格しかなくなります。

内容が同じに見えるなら、安いほうを選ぶ。これは、お客様として当然の判断です。値段で負けているように見えて、実際には値段以外で判断してもらえる材料を提示できていない、というケースがかなりあります。

自分では出しにくい情報がある

信頼残高を積むうえで、やっかいなのは、自分では言いにくいことです。

うちは技術力があります、と自分で書いても、あまり信じてもらえません。でも、お客様が同じことを言えば、信じてもらえます。同じ内容でも、誰が言うかで効き方が変わります。

だから、お客様の声は強い。ただ、集めるには手間がかかります。取材の依頼をして、時間をもらって、原稿を確認してもらう。忙しい中で後回しになりがちです。

そして、後回しにしている間も、比較検討で落ち続けています。ここは、優先度を上げる価値がある部分です。

もう一つ、意外に効くのが、担当者の情報です。誰がやっているのか分からない会社より、この人がやっている、と分かる会社のほうが、任せやすい。特に、初めて依頼する人にとっては、判断材料が少ないぶん、人の情報が効きます。

5. 購入 決めていただいたのに、そこから進まない

うちにお願いしたい、と言っていただいている。それなのに、実際に買うところまで進まないフェーズです。

前のフェーズとの違いは、他社に負けたかどうかです。他社に決まったのなら、比較検討で負けています。そうではなく、決めてくださったのに進んでいないなら、このフェーズです。

なお、商談に来たのに契約に至らない、という症状は、このフェーズでも比較検討でも起こります。どちらなのかは、断られ方で見分けるしかない部分です。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • 発注すると言われたあと、連絡が途絶える
  • 決裁や稟議で止まっている
  • 契約書のやり取りが長引き、そのまま流れる
  • 申し込みの手前で離脱している

このうち、当てはまるものがあれば、購入の段階が詰まっている可能性があります。

成約率の目安

このフェーズを判断するには、成約率を見るのが確実です。

ただ、自社の成約率が高いのか低いのかは、比べる相手がいないと判断できません。そこで、私たちが一つの目安として見ている水準をお伝えします。商材の特性や単価によって適正な水準は変わるので、絶対の基準ではありませんが、参考にはなると思います。

法人向けの商材で、商談まで進んだ相手に対する成約率が20%を下回っているなら、低い可能性があります。個人向けでも、スクールのように商談や個別相談を挟む形であれば、同じく20%は一つの線になります。

商談まで来ている、ということは、相手は既に興味を持ち、時間を割いてくれています。そこから5件に1件も決まらないなら、商談そのものか、その前後に原因があると考えたほうがいいと思います。

単価が非常に高い商材や、検討期間が長い業界であれば、これより低くても問題ないこともあります。逆に、単価が低く即決される商材なら、20%では低すぎることもあります。自社の数字を、過去の推移と比べてみるのが一番確実です。

商談の中身か、その前後か

成約率が低い場合、原因は大きく2つに分かれます。

一つは、商談に来ている相手がずれている場合です。まだ検討段階に入っていない人や、予算がまったく合わない人が商談に来ていると、当然決まりません。これは商談の問題ではなく、その手前の集客や選別の問題です。

もう一つは、商談そのものに原因がある場合です。資料が足りていない、伝える順番が整理されていない、相手の懸念に答えきれていない、決裁者に届く形になっていない。

見分け方としては、商談後にどう断られているかを振り返ることです。予算が合わない、という理由が多いなら、そもそも商談に来ている相手がずれています。検討します、と言われたまま消えるなら、商談の中身に原因があることが多いです。

手続きで落ちていることもある

見落とされがちなのが、手続きそのものが障害になっているケースです。

フォームが動いていない。送信してもエラーになる。通知メールが届いていない。申し込みの方法が分かりにくい。決裁者に説明するための資料がない。

こういう理由で落ちているのは、あまりにもったいない。しかも、直すのは簡単です。フォームが正常に動くかは、自分で送信してみればすぐ分かります。意外と、ここが原因だったということがあります。

契約の条件面で止まることもある

法人が相手の場合、決めていただいたあとに法務のチェックが入り、そこで修正のやり取りが始まります。支払いのタイミング、納期、対応の範囲、責任の所在、解約の条件。一つひとつは小さな確認でも、往復するたびに数日から数週間が空きます。

そうしているうちに、担当者の熱量が下がったり、他の案件が優先されたりして、そのまま立ち消えになる。決まっていたはずの案件が、契約書のやり取りの間に流れる、というのは珍しくありません。

6. 継続 一度は買ってくれたが、二度目がない

買ってくれた。でも、それきりになっているフェーズです。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • 売上のほとんどが新規のお客様
  • 繰り返し買うような商品ではないのに、次に提案できる商品が用意されていない
  • 二度目以降に提案する商品が、売れない
  • 顧客リストはあるが、購入後に何も連絡をしていない
  • お客様が離れた理由が分からない

このうち、当てはまるものがあれば、継続の段階が詰まっている可能性があります。

伸びしろが一番残っている場所

ここは、伸びしろが一番残っていることが多い場所です。

理由は単純で、すでに信頼関係があるからです。一度買ってくれた人は、あなたの会社を知っていて、商品を体験していて、支払いも済ませています。認知から比較検討までのフェーズを、すべて通過済みです。

新規のお客様に同じことをするには、広告費をかけて知ってもらい、興味を持ってもらい、比較で選んでもらう必要があります。かかるコストがまったく違います。

にもかかわらず、多くの会社は、既存のお客様に対して何もしていません。買ってくれてありがとうございました、で終わって、そのまま連絡が途絶える。

なぜ二度目がないのか

離れる理由は、不満があったからとは限りません。

多くの場合、単純に忘れられています。あるいは、また頼めることを知らない。他にどんなサービスがあるのかを知らない。必要になったタイミングで、あなたの会社を思い出さなかった。

つまり、こちらから接点を持ち続けていれば防げたケースが、かなりあります。

ここで効くのが、購入後のフォローです。使い心地はどうか、困っていることはないか。定期的に連絡を取っているだけで、次の依頼が来る確率は変わります。

もう一つ、次に買うものが用意されているか、という問題もあります。商品が一つしかないと、一度買った人には、もう売るものがありません。上位のプランや、関連する商品、継続的なサポート。次の受け皿があるかどうかで、頻度は変わります。

一度買えばしばらく必要にならない商材や、一生に一度しか買わない商材であれば、同じものを売り直すことはできません。それ自体は商材の性質なので、問題ではありません。ただ、その場合に次の商品が用意されていないと、どれだけ関係を保っていても二度目は生まれません。

提案しているのに、売れない場合

商品はあるし、提案もしている。それでも二度目が売れない、というケースもあります。

原因はいくつか考えられます。提案するタイミングが早すぎるか、遅すぎる。価格帯が飛びすぎていて、最初の商品からの流れとして無理がある。次の商品が、最初の商品と繋がっていない。

ただ、それらを整えても売れないなら、最初の商品で期待に届いていなかった可能性があります。満足していただけていれば、次の提案は通りやすい。逆に、可もなく不可もなく、という状態だと、もう一度お金を払う理由がありません。

この場合は、伝え方や提案の仕方ではなく、商品そのものを見直すことになります。マーケティングの側で解ける問題ではないので、時間はかかりますが、ここを飛ばして二度目を売ろうとしても、無理が出ます。

7. 発信 満足はされているが、広がっていない

満足はしてもらえている。でも、そこから他の人に広がっていないフェーズです。

たとえば、こんなことが起きていないでしょうか。

  • 紹介はあるが、たまたま発生するのを待っているだけ
  • 口コミやレビューがほとんどない
  • お客様の声を集めていない
  • 紹介してくださった方に、何も返していない

このうち、当てはまるものがあれば、発信の段階が詰まっている可能性があります。

紹介が回っている会社に、共通していること

紹介や口コミが実際に回っている会社を見てきて、共通していると感じることが2つあります。

一つ目は、プロダクトの質が圧倒的に高いことです。

身も蓋もない話ですが、ここが本質だと思っています。人が誰かに紹介するのは、その商品やサービスが本当に良かったときです。自分の信用を使って人に勧めるわけですから、微妙なものは紹介できません。

逆に言えば、紹介が起きていない会社は、施策以前に、商品そのものを見直したほうがいい場合があります。仕組みを作っても、中身が伴っていなければ回りません。

二つ目は、提供が終わった後も、定期的にフォローしていることです。

良い商品を提供して、そこで関係が切れてしまうと、紹介は生まれにくい。お客様が誰かに話すきっかけがないからです。

一方、その後も連絡を取り合っている関係であれば、相手の状況が変わったときに思い出してもらえます。知り合いが同じことで困っている、という場面で、名前が浮かぶ。

つまり、良い商品であることと、関係が継続していること。この2つが揃って、初めて紹介が起きます。どちらか片方では足りません。

仕組みにできているか

そのうえで、紹介を仕組みにしているかどうかで、発生数は変わります。

多くの会社は、紹介を運任せにしています。良い仕事をすれば自然に紹介される、と考えている。実際、良い仕事は前提です。ただ、それに加えて、いつ、誰に、どう伝えてもらうかを設計している会社は、明らかに紹介の数が違います。

たとえば、満足度が一番高まるタイミングを把握しているか。そのタイミングで、紹介をお願いする流れがあるか。紹介してくれた方に、何かお返しをしているか。紹介された側が、判断しやすい材料を渡せているか。

ここが回り出すと、認知にかかるコストが下がります。買った人が次の人を連れてくるので、こちらから知ってもらう手間が減るからです。

そして、これが円環の話に戻ります。発信が認知に繋がり、また新しいお客様が入ってくる。この循環が回り始めると、事業は構造的に楽になります。

第3章 単価とコストを見る

ここまでは、5つの数字のうち、集客数・成約率・頻度の3つを見てきました。お客様が動いてくれた結果として決まる数字です。

残る2つ、単価とコストは、この流れの外にあります。誰にどう届けるかではなく、何をいくらで提供しているか、という商品そのものの設計に関わる部分です。

単価 一番効きやすいのに、後回しにされる

単価は、利益に対して非常に効きやすい数字です。

同じ客数でも、単価が1割上がれば、その分がほぼそのまま利益に乗ります。追加のコストがほとんどかからないからです。100万円の売上が110万円になったとして、増えた10万円を作るために必要な作業は、ほとんどありません。

一方、客数を1割増やす場合は、そのぶんのコストがかかります。作業も増えますし、新規獲得なら広告費もかかります。同じ1割でも、手元に残る金額はまったく違います。

それでも上げられない、という場合、原因はだいたい次のどれかです。

  • 値上げの根拠を説明できない
  • 競合と比べて高い理由が言語化されていない
  • 上位の商品やプランがなく、選択肢が一つしかない
  • 関連する商品を提案していない
  • 長年この価格でやってきたので、変えるのが怖い

最後の理由が、実は一番多いかもしれません。既存のお客様が離れるのではないか、という不安です。

ただ、実際に値上げしてみると、離れるのは一部で、残った方は継続してくれる、というケースがよくあります。そして、単価が上がったぶん、少ない件数で同じ利益が出るようになり、一件あたりに使える時間が増える。結果として品質が上がり、さらに紹介が増える、という流れになることもあります。

もちろん、根拠のない値上げは反発を招きます。値上げをするなら、それに見合う理由を用意する必要があります。

単価を上げる方法は、値上げだけではない

単価を上げる、と聞くと、既存商品の価格を上げることを想像しがちです。ただ、方法はそれだけではありません。

上位のプランを用意する。関連する商品を組み合わせて提案する。まとめて契約してもらう。継続的なサポートを付ける。

商品の構成を変えることでも、一件あたりの金額は変わります。しかも、この方法なら、既存のお客様に値上げをお願いする必要がありません。安いプランを残したまま、上を作るだけです。

選択肢が一つしかない状態は、機会損失になっていることがあります。もっとお金を払ってでも手厚くしてほしい、という人がいても、その受け皿がなければ、その分の売上は生まれません。

コスト 下げられる幅には限界がある

コストは、下げれば下げるほど利益が残ります。ただし、下げられる幅には限界があります。ゼロより下にはならないからです。

ここが、掛け算の要素との違いです。客数や頻度は、理論上どこまでも伸ばせます。でもコストは、削り切ったらそれ以上は削れません。

とはいえ、削れる余地が大きく残っている会社は多くあります。

  • 手作業に時間を取られている
  • 同じ作業を毎回、人がやっている
  • 属人化していて、代表しかできない業務が多い
  • 仕入れや外注の条件を、長く見直していない

特に、毎回発生する定型作業は、見直す価値があります。一回あたり30分の作業でも、月に20回発生すれば10時間です。それが自動化できれば、その10時間を別のことに使えます。

ここは、マーケティングというより、業務の設計の話になります。ただ、利益の式の一部である以上、無視はできません。集客を増やすより、コストを下げるほうが早い、という状況も実際にあります。

もう一つ、コストを下げることには副次的な効果があります。社長の手が空くことです。

手が空けば、本来やるべきこと、つまり事業の設計や、重要なお客様との関係づくりに時間を使えます。逆に、作業に追われている状態では、どれだけ良い施策を思いついても、実行する時間がありません。

ここは、私たちが担当することの多い領域ではありません。それでも毎回確認するのは、利益の式の一部だからです。マーケティングの改善だけを見ていると、この部分がまるごと視界から外れます。

第4章 どこから手をつけるか

ここまでで、弱い場所がいくつか見つかったと思います。次は、そのうちどれから手をつけるかを決めます。

ここが一番難しい部分だと思っています。一番弱いところから直せばいい、と考えたくなるのですが、実際にはそう単純ではありません。私たち自身、この判断には毎回いちばん時間をかけています。

判断の材料は、3つあります。

材料1 掛け算か、引き算か

もう一度、利益の式です。

利益 = 客数 × 単価 × 頻度 − コスト

客数、単価、頻度。この3つは掛け算です。掛け算の要素は、どれか一つを改善すると全体に対して効きます。そして客数は、接点の数と成約率の掛け算で決まります。

たとえば、成約率が10%から12%になったとします。改善幅としては2割です。接点を持つ人数が同じなら、そこから生まれる客数も2割増えます。集客を2割増やすのと、結果は同じです。

そして多くの場合、成約率を2割上げるほうが、集客数を2割増やすより、はるかに安く済みます。集客を2割増やすには、広告費を2割増やすか、それに相当する労力が要ります。しかも、毎月かかり続けます。一方、成約率の改善は資料を整えたり、実績を掲載したりといった一度の作業で済むことが多い。そして、その効果はその後ずっと続きます。

さらに、掛け算の要素は複数を同時に改善したときの効果が大きくなります。集客数を2割、成約率を2割改善すれば、新規は1.2×1.2で1.44倍。それぞれは小さな改善でも、掛け合わさると大きく動きます。

一方、コストは引き算です。削れば利益は増えますが、削れる幅には上限があります。

このため、まずは掛け算の側を見るのが基本になります。ただし、コストが明らかに膨らんでいる場合や、社長の時間が完全に埋まっている場合は、先にそちらを解決したほうがいいこともあります。

すでに売上がある会社なら、成約率が先

そのうえで、すでに一定の売上がある会社に対して、私たちがよくご提案しているのは、まず成約率を上げる施策を実施して、そのうえで新規の集客に力を入れる、という順序です。

理由は2つあります。

一つは、順序そのものに意味があるからです。成約率が低いまま集客を増やすと、増えたぶんの多くを取りこぼします。広告費をかけて100人集めても、成約率が10%なら10人しか残りません。先に成約率を15%にしておけば、同じ100人から15人が残ります。同じ広告費で、結果が1.5倍になる計算です。

しかも、成約率の改善は一度きりの作業で済むことが多いのに対して、集客の費用は毎月かかり続けます。先に成約率を上げておけば、その後にかける広告費のすべてが、より高い効率で効くことになります。

もう一つは、成約率の改善のほうが、着手しやすいことが多いからです。資料を整える、実績を掲載する、商談の流れを見直す。多くは自社の中で完結する作業で、外部への支払いも少なくて済みます。

ただし、これはすでに一定の売上がある会社の話です。まだ商談の件数自体が少ない場合、成約率という数字自体が安定しません。5件中1件と、100件中20件では、同じ20%でも意味が違います。母数が足りない段階では、まず接点を増やして、判断できるだけのデータを作るほうが先になります。

材料2 改善にかかるコストと時間が見合うか

弱いところが見つかっても、そこを直すのに時間とお金がかかりすぎるなら、後回しにしたほうがいい場合があります。

たとえば、認知が足りないと分かったとします。ただ、その業界では競合が広告に大きな予算を投じていて、同じ土俵に上がるには相当な費用が必要でした。一方で、成約率のほうは、資料を整えるだけで改善しそうな状態でした。

このとき、より弱いのは認知でも、先に手をつけるべきは成約率です。同じ金額をかけたときに、返ってくる利益が大きいほうを選ぶ、という判断です。

私たちが施策を決めるときは、必ずこの計算をします。かけた費用に対して、どれだけ返ってくるか。弱点の大きさではなく、投じた金額あたりのリターンで決めます。

弱いところを全部直したい、というご要望をいただくこともあります。ただ、予算にも時間にも限りがある以上、どこかを選ぶことになります。私たちが最も効くところから順にご提案するのは、限られたものをどう配分するか、が本質だと考えているからです。

そして、時間軸も同じくらい重要です。

検索対策のように、成果が出るまでに半年かかるものもあれば、フォームの不具合を直すように、翌日から効くものもあります。資金に余裕がない状況で、半年かかる施策だけに賭けるのは危険です。すぐ効くものと、時間をかけて積むものを、組み合わせる必要があります。

材料3 市場の中で、どこに立っているか

同じ施策でも、市場の状況によって、効き方はまったく変わります。

競合が強い場所で正面から戦うのか、まだ空いている場所を狙うのか。たとえば検索対策なら、狙うキーワードで上位にいる競合がどれくらい強いかを見ます。大手が押さえていて、しかも長年かけて積み上げている領域なら、そこに挑むには相応の時間がかかります。同じ労力を、まだ手薄な領域に使ったほうが、早く成果が出ることがあります。

そして、この見極めを飛ばすと、うまくいきません。私たち自身の失敗を書きます。

思うように上がらなかった例

美容サロンの検索対策をご支援したときのことです。狙っていたキーワードで、思うように順位が上がりませんでした。

ご相談の段階で、この領域は難しいかもしれない、という見立てはお伝えしていました。それでも実施したのですが、結果として、クリニックのサイトに勝てませんでした。

医療系の情報は、検索エンジンの評価において、発信元の信頼性が重視されます。医師が在籍しているクリニックと、サロンとでは、同じ内容を書いても評価が変わる。ここは、コンテンツの質だけでは埋めきれない差でした。

この経験から学んだのは、戦う場所の見極めは、施策の巧拙より前にある、ということです。どれだけ丁寧に作っても、構造的に勝ちにくい場所というのは存在します。

だから、施策を決める前に、その場所で勝てるのかを見ます。勝ちにくいと分かったなら、別の場所を探すか、別の手段を選ぶ。その判断を最初にしておくことが、無駄な投資を防ぎます。

誰を相手にするか

もう一つ、誰に向けるかという判断もあります。

すでに欲しいと思っている人に向けるのが、一番早く成果が出ます。今すぐ探している人なので、届けば決まりやすい。

ただし、同じ相手を全社が取り合っている市場では、そこだけに向けると獲得の単価が上がり続けます。広告なら入札価格が上がり、検索対策なら上位を取るのが難しくなる。最終的には、体力のある会社が勝ちます。

その場合は、まだ必要だと気づいていない人に、先に知ってもらう手を打ちます。競合が誰も向き合っていない相手なので、時間はかかりますが、安く、長く効きます。今すぐの成果は出にくいかわりに、競合が入ってきにくい場所を先に押さえられます。

どちらにするかは、競合の状況を見てから決めます。空いているなら正面から、混んでいるなら手前から。ここは市場の状況次第で、絶対の正解はありません。

第5章 実際に見てみると、どうなるか

ここまでの考え方を、実際の例に当てはめてみます。

認知が詰まっていた例

車のコーティングを手がける、カービューティープロ尾山台様のケースです。

ご相談をいただいた時点では、サイトは10年以上前に作ったままで、スマホにも対応していませんでした。新規の問い合わせはほとんどなく、集客はリピーターと口コミからの紹介に頼っている状況でした。

この状態を、先ほどの流れに当てはめると、詰まっていたのは認知です。そもそも人が来ていない。この状態で、サイトの中身をどれだけ整えても、読む人がいないので成果は出ません。

ただ、私たちが最初にやったのは、検索対策ではありませんでした。強みの洗い出しです。

営業から施工、アフターフォローまで、すべてを代表の田中様お一人が担っていること。24年間で3,000台以上を手がけてきたこと。多くの競合が営業と施工を分ける中で、これは真似のできない強みでした。

なぜ、認知が詰まっているのに、先に強みを整理したのか。

認知を取っても、その先の興味関心や比較検討で落ちてしまえば、集めた意味がなくなるからです。人を集める施策と、来た人に選んでもらう準備は、同時に進める必要があります。集客だけ先行させると、せっかく増えたアクセスを取りこぼすことになります。

そこで、検索対策で人を集めながら、来た人が田中様を信頼して選べるように、写真や想いを綴った代表あいさつを載せ、サイト全体を設計し直しました。

結果として、月間の訪問者数は300人から3,900人へ、月間の問い合わせは7件から37件になりました。予約は3ヶ月先まで埋まり、開業以来最高の年商を更新されています。

認知と、その先が同時に詰まっていた例

福岡で音楽コンテンツ制作とレコーディングスタジオを手がける、HEACON LABO様のケースです。

一定の実績がありながら、検索順位が下がって流入が減り、さらに、訪れた人も問い合わせまで到達していない状態でした。認知と、その先の両方が詰まっていたことになります。

競合調査で、問い合わせに繋がるキーワードを整理したうえで、ヒアリングを重ねて強みを言語化しました。

HEACON LABO様は、長年の実績と確かな技術をお持ちでありながら、ご自身から強みを打ち出すことを、あまりされてこなかった会社でした。昔気質で、自分の得意分野を前に出すのが得意ではない、と代表の石橋様はおっしゃっていました。

そこでヒアリングを重ね、実績と対応できる領域を改めて言語化し、伝わる形に整理しました。あわせて、石橋社長のプロフィールページを新設しています。どんな人が運営しているのかが見えることで、特に初めての方の心理的なハードルを下げる狙いです。

公開後、「福岡 レコーディングスタジオ」で検索1位となり、1年以上その位置を維持しています。

そして、変わったのは数だけではありませんでした。以前は漠然とした質問が中心でしたが、サイトを読み込んだうえでの具体的な質問が増え、商談の入り方が変わっています。実績を理解したうえで問い合わせが来るので、話が早い。

これは、認知だけでなく、興味関心から比較検討までを整えた結果です。

2つの例に共通していること

どちらも、最初にやったのは施策ではありませんでした。現状の把握と、強みの言語化です。

何が詰まっていて、何が強みなのか。それが分かってから、打ち手を決めています。

そして、どちらのケースでも、複数のフェーズを同時に整えています。認知だけ、成約だけ、と切り離さずに、流れとして設計する。これが、集客だけで終わらせない、ということの実際の中身です。

第6章 それでも判断がつかないときは

ここまで読んで、自社の弱点がいくつか見えてきた方もいれば、まだ判断がつかない方もいると思います。

判断がつかない理由は、だいたい2つです。

一つは、数字が手元にないこと。集客数も成約率も頻度も、測り方が分からなければ比べようがありません。アクセス解析が入っていない、商談の記録を残していない、といった状態だと、そもそも比較する材料がありません。

もう一つは、複数の弱点が同時に見つかって、どれが本当に一番効くのか決められないこと。

これは、社内の視点だけで判断するのが難しい部分です。同じ弱点でも、競合の状況や市場の中での位置によって、手をつけるべきかどうかが変わるからです。

ここまで書いてきた見方は、そのまま私たちがご相談をお受けするときの手順でもあります。まず利益の4つの数字を確認し、お客様の流れのどこで止まっているかを見て、市場の状況と照らして、どこから手をつけるかを決める。その先で必要になった打ち手は、私たちが実行まで担います。

つまり、この記事に書いてあることは、実際にお会いしたときに一緒にやることの前半部分です。

書いたことが、そのままお役に立つとは限りません。それでも、自社のどこが弱いのかを考える手がかりくらいにはなるのではないかと思っています。読んで、自分たちで進められそうなら、それが一番です。

判断がつかない部分があれば、そのときにご相談ください。

サイトや数値を見せていただき、いまどこで止まっていそうかを確認します。この段階では、細かい調査までは行わず、大きな詰まりがどこにありそうかをお伝えします。費用はいただきません。

うまく言葉にできていなくても構いません。見せられる数値がなくても、そこから整えていけます。アクセス解析が入っていなければ、その設定からご一緒します。